久しぶりの投稿。
今年は夏の猛烈な暑さの余韻が10月半ばまで続き、この頃になってようやく秋らしいひんやりした空気を感じるようになった。
今週末から5回目の八女福島白壁ギャラリーが始まる。
「暮らしをめぐる小さな旅」というのが地元の皆で運営するこのイベントのコンセプト。5年前にこの言葉に辿り着くまでに何度も何度も集まったのがついこの前のようだ。
一昨年からはテーマを決めるようになり、最初が「縁起もん」。次は「道具-これ何ね?-」。
そして、今年、出店者皆で考えたのが「時間散歩-時を愉しむ-」というもの。
八女福島には色んな時代を彷彿とさせるものが残っている。
17世紀の始めに福島城が築城された時に整備された掘割や町割りの名残り。その後在方町として発展していく中、江戸後期から明治期に建てられた町家。この町家もこの土地ならではのスタイルがある。
大正から昭和の初めにかけては洋風の意匠を取り入れた建物や所謂看板建築と呼ばれるものも出てくる。
戦後には土橋市場のような混沌とした(と書くと失礼な感じがしないでもないが、物が無い時代に手に入りやすい素材で時間を掛けずに必要に迫られて作ったという意味だ)独特の雰囲気を持つ空間も出てきた。
また、江戸時代から今日まで、様々な時代の暮らしを反映した建物の内部では、伝統工芸に始まり、昔ながらの手仕事や商店、最近ではカフェや若い人達の店など、様々な生業が営まれている。
このように、八女福島の町は時間を超えていくつもの層を重ねるように積上げられて今がある。
どの町でも歴史の積み重ねはあるのだろうけれど、八女福島はそれをより五感で感じられる、というので、今年の白壁ギャラリーでは、ゆっくり歩きながら400年の時間を楽しんでもらおうというのだ。
それからもうひとつ。これは個人的に思っていること。
白壁の町並みも修理が進み、年々綺麗になっている。一方で、これは仕方の無いことだけども、100年以上風雨にさらされて、言い表し様の無い位に美しい風合いを見せている瓦屋根のように、長くそこに建っていることで生み出される建物の景色は、修理とともに失われていく。もちろん、それは僕たちが見ている美しさを次の世代に手渡すために必要なことで、それは単に事実として受け止めるしかないのだけれど、頭と心は違っていてどうも上手い具合に受け止めきれていない。
そして手仕事。10年後か20年後に残っている仕事はそう多くないように思う。何とか続いて欲しいとは思うが、僕自身の力では如何ともし難い。
いくつもの層を重ねるように積上げられた今の八女福島の町ではあるけれど、積上げる毎に確実に失っていくものもある。昔は失わずに積上げられたんじゃないかなと思うが、今の時代はそうではなさそうだ。
今見ている風景は、明日はもう見ることが出来ない風景で、なんて書くとちょっと湿っぽいと思われるかも知れないが、今という時間にしか出会うことの出来ないこの町の風景とこの風景を形づくっているものをしっかりと目に焼き付けてもらえると嬉しい。
「時間散歩-時を愉しむ-」というテーマを受けて、そんなことを考えている。
八女福島白壁ギャラリー2013
日程 11月2日(土)、3日(日)、4日(月/祝)、9日(土)、10日(日)
場所 八女福島の古い町並み界隈
ブログ http://gallery.yame-machiya.net