夏の夕暮れと七輪

数ヶ月に一度、山あいに住む知人に会いに行く。
今回はちょっと間が開いて、春以来約五ヶ月振りに家族で足を伸ばした。

真夏の暑い時期というのに、山から流れてくる風は我が家のまわりのそれよりも随分と涼しい。
ちょうど夕暮れ時で、車を降りるとヒグラシのカナカナと啼く声と川のせせらぎ、樹々が葉を揺らす音だけが心地よく耳に入ってくる。

家の中に人気が無かったので奥まで歩いて行くと、母屋の裏、下屋の下で椅子に座った知人の後ろ姿があった。
夕食中だったらしく、振り返った知人の向こう側には炭火の入った七輪と金網に載せられた肉が数枚。椅子の脇に置かれた小さなテーブルの上に白ワインの入ったグラスといくつかの肴がある。

なかなか手に入らない旨い肉が入ったから夏の夕暮れをひとり楽しんでいるのだと、何故だか少し恥ずかしそうに言う知人の邪魔をしないようにと早々に引き揚げた。

帰りの車中で七輪を買って我が家でもやろうという話になったのは言うまでもない。