ミニチュア壜

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倉庫を片付けていた時に出てきたウイスキーのミニチュア壜。知らないうちに中身が減ってしまっている。

十九になってすぐの頃、スコットランドのエジンバラに行く機会があった。
どんないきさつだったのか全く覚えていないのだが、そのとき泊まったユースホステルで出会った日本人のおじさんと、特に仲良くなった訳でもないのに、郊外にあるグレンキンチー蒸留所へバスで行った。イギリスの美しい田園風景という言葉がぴったりな麦畑の中にひっそりと佇む風格のある建物だったというのがとても印象に残っている。蒸留所の隣にパブがあり(記憶は曖昧・・・)、ウイスキーの試飲のあとにさらにビールを一杯ひっかけて気持ち良くなったところまではいいのだが、あまりに田舎でバスの本数が少なかったため、ヒッチハイクで帰ろうと目論んだものの、顔を真っ赤にしたぼさぼさ髪の若いのと少し禿げ上がった小太りの中年男性という二人の東洋人を乗せてくれる車などある訳も無く、道端の小さな歩道に腰を下ろしぼんやりと麦畑と青空を眺めながらバスを待っていた。

蒸留所での出来事もひとつ。
蒸留所では観光客向けに簡単な工場見学をしていて、木製の大きな発酵槽(の記憶しかない)だとかポットスチルなどを見学して試飲コーナーに案内された。判りもしないのに一生懸命試飲して、もちろん全部飲み込んでふわふわしている視線の先に、以前イギリス南部の町で知り合ったNさんがいる。半年前、最後に会った時に帰国すると言っていたNさんがこんな所にいる訳が無く、普段ならよく似た他人だろうと声を掛けないことが多いのだが、この時はふわふわしていたので迷わず声を掛けた。そしたら、やはりNさん。エジンバラの英語学校へ行っていて学校のエクスカーションでウイスキー蒸留所へ来たのだとか。

今でも思いがけず人と会うことはあるが、この時程驚いたことはない。