Kさんのこと

ピッチャーと花と蛍光灯 006

写真にある店の蛍光灯のカバーは、八女の松尾和紙工房で購入した和紙を数種類切り貼りし、ヨシズをばらした骨組みに貼り付けて作ったもの。今からちょうど11年前に現店舗の改装をしているとき、店のデザインをして下さったKさんが大工工事の最中、現場管理の片手間にコンクリート土間の上に胡坐をかいて、まるで職人のようにコツコツ作って下さった。

そのカバーも11年経つとエアコンの風が当たる所などはぼろぼろになり、ところどころテープで貼り付けてなんとか誤魔化してきたが(思っているのは本人だけか?)、あまりの惨状を見かねた家内が、そのうち特に状態の悪いものを取り外して、さあやりなさいと僕の目の前に置いたものだから、ほかの仕事の手を止めて貼り直す羽目になった。
どうしようかと思いあぐねていたところ、Kさんが作ってくれていた予備の分があったのを思い出し、カウンターの中などごそごそと探してみると11年前に見たそのままに4色の和紙を貼り合せた骨組みに貼り付ける前の状態のものが3つ出てきた。そのうち2つを接着剤で骨組みに貼り付け、蛍光灯のところに吊り下げた。写真の手前のものがそれ。残ったひとつは今後のために大切にとっておくことにした。

私が小学生の頃から可愛がってもらっていたので、ついつい甘えてしまい、11年前はお金もないうえデザインのことも全く分からないくせにいろいろ注文をして、Kさんには随分と迷惑をかけた。今ならもう少しちゃんとした話が出来ると思うのだけども、2年前に急逝された。
亡くなられる前、数年間全くの音信不通で、そのうち連絡しようと思っていたまま、とうとう会えず仕舞いだったのが胸の奥に引っかかっていて、長い間もやもやした気持ちが続いていた。

蛍光灯のカバーを替えながら、久し振りにKさんに会えたような、2年前のもやもやが蘇るような、暖かく苦しい気持ち。

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