地元のAさんによると、この辺りは長屋が多かったとのこと。
その名残の三軒長屋が2棟。そこには置屋があり、自前芸者さんが住んでいた。
戦前生まれのAさんは、当時少年だったので座敷に行くことはなかったが、近所に同世代の女の子が置屋の仕事や稽古をしているのをよく見かけたらしい。そういう芸者になる前の人を福島では「仕込みさん」と呼んでいたそうだ。仕込み期間を終えると芸者になる。家の借金などが理由で芸者になった人は、それを返し終わると置屋を出て自前芸者になったり、置屋をするようになる。
以上Aさんからお聞きした内容を大きく端折った大雑把な説明。
芸者さんと聞くと華やかな印象がある一方で、基本的に前述のような境遇の人が多かったのだそうだ。
それから、もう米寿を過ぎたOさんの話。
幼い頃、何かの事情で、親戚が住む長屋で一時期暮らしたとのこと。
すぐ隣に芸者の元締めのような方が住んでおられ、よく遊びに行っていた。そして御馳走になったカレーライスの味が忘れられないとおっしゃっていた。
また、もう故人になられたRさん。
家が傘屋だったので、子どもの頃に家業の手伝いで時々料亭に傘を届けに行かされたそうだ。
芸者さん達が人力に乗っていく姿のこと、料亭で芸者さんに会うのが照れくさかったことなど話して下さったことを思い出した。